徹底分析!Youtuberの動画がここまで人気なワケ

徹底分析!Youtuberの動画がここまで人気なワケ

いま、中高生を中心に絶大な人気を誇るYoutuber。私はYoutuber世代ではないので、ほとんど彼らの動画を見たことがなく「どうせ素人のお遊びなんだろう」程度に思っていました。しかし、あまりにも人気すぎる。中高生のみならず、大学生、社会人でもYoutuberの動画を見ている人が結構いるようなのです。

なぜだ、なぜここまで、人々を惹きつけるのだ!?そう思った私は、Youtuberの動画を徹底的に分析してみることにしました。すると、彼らが生み出す「作品」のすごさがわかってきたのです。

Youtuberが動画でやっていることは、誰でもできそう…

「スマホを変えた」「猫を飼い始めた」「チョコミント」?

まず、Youtuberはどんな動画をアップしているのでしょうか。チャンネル登録者数650万人を超えるヒカキンさん(HikakinTV)を例に見てみます。

彼のチャンネルの動画一覧がこちら。ざっと見てみると、「スマホを変えた」「猫を飼い始める」「〇〇を買った」「〇〇を食べてみた」といった内容のタイトルが並んでいます。ほかにも、雪にダイブして雪を食べてみたり、嫌いなチョコミント味の商品ばかりを買ってきて食べ比べてみたりと、割と誰にでもできそうな内容の動画が多い気がします…。(もちろん、私はやりませんが…)実際に見てみても、彼が特別な能力や知識を披露することは、基本的にはありません。タイトル通りに雪にダイブし、チョコミント味の感想を言います。

これは、ほかの多くのYoutuberにも言えることですが、彼らの動画の大半は、アイディアを思いつきさえすれば、誰にでもできるような内容のものなのです。

つまり、Youtuberの動画の多くは、情報としての価値はそれほどないと言っていいでしょう。彼らの動画を見に来る人々は、何かの情報を探し求めて、その動画にたどり着くのではありません。内容はどうであれ、そのYoutuberが何かをやっているところを見たいと思う人が、動画を再生するのです。

Youtuberだけじゃない 中身よりスタイル

そう考えると、少々「くだらない」と思えて来なくもないですが、実はこうしたコンテンツのあり方、すなわち、「何をやっているか」という中身よりも「誰がやっているか」とか「どういうスタイルでやっているか」といった形式によって人々を惹きつけているものは、現代社会の中に多く見られます。

例えば、Twitterの「フォロー」は、特定の人物の投稿なら内容に関わらず表示するという、まさに「誰がやっているか」に重点を置いた仕組みです。

また、これは以前あるラジオ番組で聴いたことなのですが、テレビ朝日の「アメトーーク!」はYoutuber的な番組だという話で、テーマごとに、その分野に詳しいとされる芸人さんたちが登場して、おもしろおかしく語る。視聴者は、別にそのテーマに関する情報を得たくて番組を見るのではなく、芸人さんたちが語っている様子を見たくて見るのだと言うのです。

そう考えると、テレビでよく見る芸人さんの中にも、ネタの内容より芸のスタイルが人気を呼んでいるケースが少なくないように思います。オチで必ず決め台詞を言うようなスタイルなどは、その典型と言えます。

インターネットでどんな情報でも手に入れられるようになった一方で、娯楽として求められているのは、おもしろい「人」であり、おもしろい「スタイル」であり、Youtuberはそのツボをしっかりと抑えているというわけです。

Youtuberはプレゼン職人であり、動画職人でもある!?

Youtuberは、タレントというより…

確かに、Youtuberがやっていることは、誰でもできるかもしれません。
しかし、彼らがすごいのは、誰にでもできることを、彼らだけができる方法で動画にしているところなのです。Youtuberは、タレントというよりむしろ、「プレゼン職人」および「動画職人」だと言うことができます。

動画に見え隠れするプレゼンの技

基本的にどの動画でも共通しているのですが、先ほど紹介したヒカキンさんの動画を見てみると、まず、印象的な導入からはじまります。そこで、見ている人を引き込んでから、短いオープニングの後に、動画で扱う内容を説明して何の動画なのかをしっかりと明示します。そして、流れるように本編に入っていきます。この一連の流れは、プレゼンの構成として優れており、視聴者を引き込みやすいように、また、内容を理解してもらいやすいようにできているのです。

話すスピードも速すぎず、遅すぎず、とても聞き取りやすいです。プレゼンは、聴衆を目の前にしてやる場合とカメラ越しの相手にやる場合とでは、勝手が大きく違います。

聞いている相手が目の前にいる場合では、相手の反応を伺いながら、自分の話が理解されているのかを確かめながら話すことができます。一方、カメラの向こうの相手に話す時は、そうはいきません。あまり説明が少ないと、視聴者は理解できませんし、逆に同じことをずっと話していると、退屈してしまいます。その話す内容や量の絶妙なポイントをついて話す能力をYoutuberは持っていると言えます。

さらに、簡単に言えるようなことも、風変わりな声や動き、あるいは効果音付きで表現することで、視聴者を惹きつけ、退屈な印象を与えません。しかし、そうした特徴的な声や動きも多用するのではなく、「ここぞ」というところで使うことで、ずっと見ていても疲れないような動画に仕上げいます。

動画の撮影・編集もハイレベル

動画の撮り方や編集方法でもYoutuberの技が光ります。例によってヒカキンさんの動画を見てみると、ほぼ全ての発言が見やすいテロップになっています。これは、先ほども少し触れた、伝わっているかわからないゆえの工夫です。聴覚と視覚の両側からのアプローチによって、視聴者はより感覚的に内容を把握することができます。

そして、最も注目すべきは、ヒカキンさんをはじめ多くのYoutuberは、ジャンプカットと呼ばれる映画技法を駆使し、動画をより見やすいものに仕上げているという点です。ジャンプカットとは、同じ構図で同じ人が画面内にいるようなときに、部分的に映像を飛ばしてつなぎ合わせる技法のことです。言葉に詰まった部分や「えー」とか「あの」といった、あってもなくても良いような言葉をカットしていくことができます。

さらに、言葉と言葉の間を極端に短くすることで、畳み掛けるように話しているような表現も可能になります。単に早口にすると、ただ聞き取りにくくなるだけですが、ジャンプカットを活用することで、話すスピードはそのままでも畳み掛けているように見せることができるのです。

Youtuberは、このようなプレゼン能力や撮影・編集技術を駆使して、誰にでもできそうなことを、彼らにしか作れない「作品」へと仕上げていくのです。

誰にでもできるけど、彼らにしかできない

このように分析してみると、Youtuberの動画がいかによくできているのかがお分りいただけたかと思います。私も「素人のお遊び」だと思っていたのを反省します…。

確かに内容は、割と誰にでもできる(ちなみにそんなことないものもあります)ものが多いですが、娯楽に中身よりも人物やスタイルといった形式を求める現代社会の一側面と、「プレゼン職人」「動画職人」とでも言うべき技術に支えられて、なかなか真似できない「作品」が生み出されているというわけです。私たちも、Youtuberからいろいろと学ぶことがあるかもしれませんね。

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