「いきなりステーキ」に学ぶ、飲食店を開業する際に重要なFLコストとは

「いきなりステーキ」に学ぶ、飲食店を開業する際に重要なFLコストとは

飲食店を始める時に、まず考えるのは「何のお店をやろうか?」ということではないでしょうか?「え、そんなの自分の興味のあるジャンルに決まっているよ」と言われそうです。実は、それが初心者に見落としがちな罠なのです。

初心者には気づきにくい「これから飲食店を始めるためにチェックしておきたいポイント」というのが実はありますので、飲食店を3店舗経営していた私が、特別にお伝えします。勢いで始めると後からでは修正が効きませんので、ぜひ参考にしてみてください。

お店を始めたいのなら数字を意識するべし

お店を始める時に考える数字でいうと、「どれぐらい売れるかなー」という予想売り上げは考えるかと思います。もちろん予想売り上げも重要なのですが、まず間違いなく予想通りにはなりません。特に新規で始める場合はデータもないので当然です。

飲食店経営に重要なのはコストコントロール

売り上げの予測は新規開店であればかなり難しいと言えます。ほとんどの場合は、根拠があるというより期待を込めたただの「作文」の売り上げになる可能性が高いからです。

自分が開業する前のアドバイスは、「実際の売上は見込み売上の半分でも大丈夫なように設計しろ」といわれました。それぐらい予測どおりにはいかないよという戒めで言ってくれたのだと今では思っています。

FLコストとは

一方、コストの方は明確です。飲食店でコストというと、大きくわけて3つあります。

食材費(Food)
人件費(Labor)
家賃(Rent)

です。そしてその大きい3つの中の上位2つである食材費と人件費の合計の割合が売上高の何パーセントを占めているかで、FLコスト比率は決まります。業種によって違いますが、FLコストは概ね60%で利益がでる体質と呼ばれていて、それ以上になると難しいとされています。

「いきなりステーキ」の特徴

https://twitter.com/UFOcatcher40?lang=ja

そんなか、飲食店で急成長しているのが、「いきなりステーキ」です。立ち食い形式といろいろな販売促進が功を奏して急成長しています。

そんな「いきなりステーキ」ですが、どのようなFLコストのカタチをしているのでしょうか?

結論から言ってしまうと、社長自らがインタビュー記事で述べていますが、食材原価率70%、人件費比率が7~8%。FLコストは77~78%という驚異的な数字で、普通だったら間違いなく赤字です。

それでも快進撃を進めているのですから何かしらの理由があるはずです。以下からその説明をしていきます。

インタビュー記事:https://venturetimes.jp/interview/attention/11221.html

ステーキ業態の立ち食いスタイル

「いきなりステーキ」で特徴的なのが、ステーキの立ち食いスタイルです。

これは

・お客さんの滞留時間が短くなる(回転率を高める)
・お客さんのスペースが狭くても良くなる(店舗面積が小さくても良い)
・ステーキなので単価が高い(売り上げが高くなりやすい)
・立ち食いだからこそコストパフォーマンスが良い肉を提供できる(食材原価率70%)

などの利点を出すことに成功しています。

つまり、

お客さんにとっては、とってもリーズナブルにステーキを食べることができてうれしい。

お店にとっては、マーケットが広いステーキのジャンルで、お客さんがたくさん入ってきてくれるので売り上げが立ちやすいのでうれしい。

というお互いにメリットのあるお店になっているのです。

人件費もかからない

その上、立ち食いなので、

・スタッフの移動が少なくて済む。

という特徴の他に、
 
・熟練シェフに、高齢で給料を安くなった人を採用する

ことで、人件費比率を驚異の7~8%を維持しているようです。

家賃は高くても家賃比率は低い

「いきなりステーキ」は立地もいい場所にあることが多いので家賃も高いと思われます。

ですが、売り上げが高くなることで、家賃比率が相対的に下がります。

結果的に、店舗面積当たりの売上が、他の業態よりも高いためにコストが高くても、「利益額」は一定額あるので、多店舗展開をどんどん進めることができるといえます。

問題点もある

しかし、問題点もあります。他の食べ物の場合でも応用出来るものと出来ないものがあるということです。

原価率を究極にあげたお店は、お客さんには好かれます。ですが急な円安や災害など外部環境によって食材の原価があがると収益に直結してしまいます。「いきなりステーキ」の社長はもちろんそのリスクも考慮して運営していると思いますが、素人にはとてもマネできない領域です。

あなたがとるべき戦略

ではあなたが考えるポイントは何があるでしょうか。以下より考察してみます。

売上は上限がないカタチ

飲食店の売上上限は、客席の広さと滞留時間で決まってしまいます

まず考えるのは、滞留時間が短いものを選ぶということです。

次に客席ではなく、テイクアウト比率が高いものを選ぶということです。例えばファーストフード、たこ焼き・からあげ系、パンなどがあるかと思います。

人件費はなるべくかからないカタチ

そして次の項目は人件費を抑える業態を考えるということです。

デリバリーは、スタッフ一人がわざわざ一人のお客さんのために時間を使ってしまうので効率が悪いといえます。

店内型でも、テーブルよりもカウンター型のほうがスタッフの移動は少ないので、人数を減らして営業できる可能性が高まります。

食材はなるべくロスにしない

 
さまざまなメニューを出すタイプのほうが、いろいろな食材を調達する必要があるので、どうしても廃棄の割合が増えてしまいます。ですので、なるべく単品商売のようなもののほうが適しているといえます。

家賃をなるべく安く

家賃はなるべく安くできる方法をかんがえます。基本的に家賃が高いのは、立地場所がいいか、店舗面積が大きいかどちらかです。店舗面積が大きくなると、人件費も上がってしまいます。となれば同じ家賃だとしても、立地がいい場所だけど狭いほうを取るほうが全体的に見た場合コストは下がります

昔の吉野家はめちゃくちゃ稼げていた

上記の条件で当てはまっていたのは「吉野家」です。

15年ぐらい前までの吉野家は「カウンター型」で人件費率と家賃比率が相対的に低く、「24時間営業」と牛丼一杯を30秒で、値段も400円でも売れていたので売上の上限が高かったのです。

そのうえ、メニューがほとんど牛丼だけだったので、「食材ロス」も少なく済みました。そのため、飲食業界の中でも1,2位を争うくらい現金を稼いでいた業態でした。

ところが、そのあと「松屋」「すきや」の競合とぶつかり、売り上げが下がることで利益の優位性を保つことができませんでした。

まとめ

時代が変わってしまうと、今まで優れたビジネスモデルだったとしても、利益が出ない体質になってしまいます。

だからといって、何も考えず、闇雲にお店を始めるのは愚の骨頂です。毎年たくさんのお店が開店しますが、たくさんのお店も閉店しています

少しでも優位にお店を開業するならば、今回あげたポイントをしっかり押さえたほうがリスクは少ないです。ぜひ活用してみてください。

この記事を書いた人

このライターの記事