近年、賛否両論ありながらもYouTuberがクリエイター・新しい職業として少しずつ認識されるようになってきています。そんな中今年(2018年)10月2日に大手ゲーム実況者の「アブ(-abu-)」さんが、引退動画をアップロードしYouTube界を震撼させました。いったいなぜこのような結論に至ったのでしょうか。今回は動画広告とはなにか?ということからゲーム実況の問題まで探っていきます。
引退の理由は“広告が付かなくなった”こと
チャンネル登録者は130万人、1427本もの動画を投稿してきた「アブ(-abu-)」さん。もともとはニコニコ動画で有名なゲーム実況者でしたが、2014年2月にYouTubeチャンネルを開設し、“アブさん”と呼ばれ親しまれています。その柔らかい語り口で男女問わず人気のあり、今回の引退動画には大きな反響がありました。
アブさんは動画内で、“少し前から突然広告が付かなくなり、何度もYouTube側に問い合わせたが原因も分からなかった”、“モチベーションが下がってしまったからやめる”という趣旨の発言をしました。多くのファンに愛されているアブさんのチャンネルが、いったいなぜこんなことになってしまったのでしょうか。
YouTubeガイドラインによる「広告に適さない動画」
そもそも何が問題となっているのかよくわからないという方もいますよね。今回の騒動で議論となる大きな点は「ガイドラインに違反していたのか」という点です。そこでまず、YouTubeが定義する「広告に適さない動画」の項目を見てみましょう。
1.物議を醸す問題やデリケートな事象
2.薬物や危険物質の描画や助長
3.有害または危険な行為
4.不快なコンテンツ
5.不適切な表現
6.家族向けのキャラクターの不適切な使用
7.炎上目的、侮辱的
8.性的内容を示唆するコンテンツ
9.暴力的
この項目に当てはまるような動画は広告が付かないというワケですね。では、実際にアブさんの動画はどうなのでしょうか。ご本人も動画内で“世界一健全なチャンネル”というように、ほとんどの動画は上記に当てはまるものではないように思います。ただ、『おかしいマリオシリーズ』では「6.家族向けのキャラクターの不適切な使用」「8.性的内容を示唆するコンテンツ」あたりに抵触しそうな下品な内容ではあるので、広告がはがされるのもしようがないかもしれません。
ただ、上記の定義はあくまでも「広告に適さない動画」、すなわち当てはまる動画は広告を付けられませんよというお話なので、問題ない他の動画まで対象になるのは腑に落ちないところがあります。
ゲーム実況が良くない?
もう一点、議論されているのが「そもそもゲーム実況は良いのか・悪いのか」ということ。流行りの『Nintendo Switch』や『PlayStation 4』など、市販のゲームの中にはゲーム内容を公開することは著作権違反になってしまう作品があります。著作権で保護された作品の実況動画をアップロードすると、YouTubeからの削除対象にもなりかねません。
さらに別の観点では、「ゲーム実況で利益を得るのはおかしい」との声もあります。こればかりはゲームメーカー側の意見も聞いてみたいところですが、動画を見て購買意欲が高まったというリスナーもいるようですし悩ましいですね。個人的には著作権違反にならないフリーゲームなどの実況であれば、見て楽しむ人たちもいることですし広告収入くらいいいんじゃないの?と思います。このことについてはネット上で賛否両論あるようですが、他にもゲーム実況者がたくさん活躍している中で、アブさんのチャンネルだけが広告をはがされる対象となったのは「ゲーム実況が悪いから」ではないでしょうね。
まとめ~結局原因は分からず~
引退動画がアップロードされてから2日後の10月4日、『ご報告』という動画でなんと“広告が戻った”ことをお話されていました。広告…付くんかい!なんだかYouTubeに振り回されている感じすらありますね。ネット上では今も議論が交わされていますが、肝心のYouTube側から正式なコメントはないようで、ご本人も“問い合わせたが理由が分からない”とおっしゃっていました。事前勧告なしに突然広告をはがされ、原因も教えてもらえないとはいかがなものか…。
ファンはもちろん、他のYouTuberにとっては他人事ではない今回の騒動。『好きなことで生きていく』…大手YouTuber事務所UUUMのキャッチフレーズですが、YouTube一本で生活している人たちも楽じゃないなあと感じる一件でした。幸い、今回取り上げたアブさんは会社員が本業でYouTubeは副業のようですが、引退宣言をされる前までは会社を退職するつもりだったそう。そんな中でいきなり収入の当てがなくなるのは不安ですし、モチベーションがなくなるのも当然ですね。
とにかく今後もYouTuberを続けていくにあたって、広告を突然はがされるようなことがあっては死活問題ですし、改善していくためにも原因をはっきりさせて欲しいものです。筆者もいちファンとしてYouTube側の対応は気になるところ。今後も動向を追っていきたいと考えています。